第115回看護師国家試験 午後46
Aさん(58歳、男性)は農作業中に有機リン系殺虫剤を散布していたところ、急な嘔気と頭痛、呼吸困難が出現したため救急搬送された。搬入時、呼吸は促迫で流涎があり、縮瞳が認められた。
Aさんに直ちに投与される薬剤はどれか。
- ビタミンK製剤
- オキシコドン塩酸塩
- バンコマイシン塩酸塩
- アトロピン硫酸塩水和物
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答え
4 アトロピン硫酸塩水和物

WING先輩の解説
縮瞳とよだれを、自律神経の表に戻す
自律神経を覚えたら、薬の問題にも使います。交感神経は戦うときの神経、副交感神経はリラックスする時の神経。 瞳孔や気管支、消化管の働きを、この対比で整理してきました。
交感神経では、瞳孔も気管支もどっちも開きます。反対の副交感神経では、縮瞳し、唾液の分泌が増え、気管支は収縮する方向です。
今回のAさんには、縮瞳と流涎(りゅうぜん)があります。流涎は、よだれが多く出ている状態です。嘔気や呼吸困難もあります。症状を一つずつ眺めるより、まとめて「副交感神経の作用が強く出ている」と読みます。
有機リンは、アセチルコリンの分解を妨げる
問題文には、有機リン系殺虫剤を散布していたとあります。ここが原因の手がかりです。
副交感神経が臓器へ働きを伝えるときには、アセチルコリンが関わります。有機リンは、そのアセチルコリンを分解する酵素、アセチルコリンエステラーゼを阻害します。
分解できないと、アセチルコリンの作用が過剰になります。縮瞳、分泌物の増加、気管支収縮などが起こり、呼吸にも影響します。症例の流涎や縮瞳は、ここにつながるんです。
有機リン → 分解酵素を阻害 → アセチルコリンが過剰 → 縮瞳・分泌増加。
アトロピンは、副交感の作用を抑える薬
アトロピンは抗コリン薬です。抗コリン薬は副交感神経を黙らせます。答えは4、アトロピン硫酸塩水和物です。
普段の薬の勉強では、「抗コリン薬で口が渇く」と覚えました。唾液も出なくなります。その同じ作用が、今度は分泌物が過剰な中毒の治療につながります。
知っている作用を、逆向きの症状に使う。よだれが増えている人に、唾液などの分泌を抑える薬を考えるわけです。
正確には、アトロピンはアセチルコリンが作用するムスカリン受容体を遮断します。アセチルコリンの分解酵素を元に戻す薬ではありません。
ほかの薬は、何を治療する薬か
ビタミンK製剤は、ビタミンKの不足などに関わる出血の治療に用います。有機リンによるコリン作用の過剰を抑える薬ではない。
オキシコドン塩酸塩は、オピオイド鎮痛薬です。頭痛があるから鎮痛薬、と一つの症状だけで選ばないこと。今回は殺虫剤の曝露後に、縮瞳と流涎、呼吸困難がまとまって出ています。
バンコマイシン塩酸塩は、抗菌薬です。今回の中毒の解毒薬とは別です。
なお、有機リン中毒には筋力低下なども起こり、アトロピンだけでは全ての作用を解除できません。呼吸への対応が重要です。
- 縮瞳と唾液分泌の増加は、どちらの自律神経の作用と結び付きますか。
- 有機リンは、何の分解を妨げますか。
- アトロピンは、分解酵素を元に戻す薬ですか。
答えを確認する
- 副交感神経です。
- アセチルコリンです。その分解酵素を阻害します。
- いいえ。ムスカリン受容体を遮断して、過剰な作用を抑えます。
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